ライオン株式会社
ヘルス&ホームケア事業本部 薬品事業部
朝比奈 大輔さん
目の疲れ、かすみ、痛みのほか、熱っぽく感じる、異物感があるなどの不快症状は、乾燥による角膜の損傷が原因かもしれません。新型コロナウイルスの影響で在宅時間が増え、スマートフォンやPCの利用時間も増加しています。これらデジタル機器の作業中は、まばたきは通常時の1/4程度まで減るため、涙が蒸発しやすくなり、角膜が乾燥してしまいます。乾燥した角膜は、とても傷つきやすいのです。
角膜の乾燥の原因は、デジタル機器の長時間利用だけではありません。加齢や室内の乾燥、コンタクトレンズの過剰使用、病気や薬の影響、ストレス、過労など、原因は多岐にわたります。
角膜のもっとも外側の部分を、角膜上皮といいます。角膜上皮には、高い自己修復機能があり、たとえ乾燥し、傷ついても5~7日ですべての細胞が入れかわります。古い細胞は剥がれ落ちて涙と一緒に流れたり、目ヤニとして排出されます。ところが、現代は、角膜を傷つける要因がとても多いのです。
角膜の自己修復機能を回復するには、以下の2つが大切です。
(1)細胞の増殖力を高める
ヒアルロン酸は保水性にすぐれ、細胞の成長を促し、修復を促進します。もともとは体内でつくられる成分ですが、加齢により産生量は減っていきます。ヒアルロン酸を産生するためには、産生を促すビタミンAが欠かせません。さらにビタミンAは、涙を目の表面にとどめるムチンの分泌も促します。
(2)角膜を涙で潤す
角膜上皮を修復するためには、涙で潤すことが大切です。涙は3層構造になっていて、いちばん上の「油層」は、まぶたの裏側にあるマイボーム腺から分泌される油の層で、涙の蒸発を防いでいます。角膜に近い「ムチン層」は、ネバネバしており、涙を目の表面につなぎとめる役割をはたしています。この涙の層を瞬時につくるのが、まばたきです。
まばたきすると、目に必要な成分を含んだ涙が角膜にいきわたり、汚れた涙を涙点という目頭にある涙の排出口へ運びます。まばたきは、涙の仕組みをうまく機能させるために欠かせないものなのです。
自宅や職場などで行う、簡単なセルフケアで、角膜の自己修復機能をアップさせることができます。
●まばたきを多くする
とくにスマホを見たり、PC作業の際などは、意識してまばたきすること。
●目をあたためる
電子レンジであたためたおしぼりや、市販のホットアイマスクで、目をあたためることも有効です。
●入浴やストレッチで副交感神経を優位に
交感神経が優位だと、涙が出にくくなります。入浴やストレッチでリラックスしてまばたきの回数が増えると、涙も出やすくなります。これらのセルフケアのほかに、角膜修復を促す目薬を使用する方法もあります。
角膜を修復し、涙をとどめてくれるビタミンAを配合した目薬があります。また最近では、防腐剤無添加のものもあるので、パッケージをよく見て選びましょう。症状が改善されない場合は、眼科を受診してください。
スマホの普及やコンタクトの過剰使用などにより、かつてないほど、角膜が傷つきやすい時代。皮膚が乾燥したらクリームで保湿するように、目の乾燥にもケアが必要です。スマホやPCとのつきあい方を見直し、不快症状が出たら、セルフケアと自分に合った目薬を活用してください。