三宅貴子(みやけ・たかこ)さん
イチジク製薬株式会社
情報企画部/薬剤師
便秘の原因は、生活習慣、病気、薬……などさまざまです。もっとも多いのは、不規則な生活、ストレス、加齢。これらがひきがねになって大腸→肛門の動きが乱れてしまう。
大腸が便を肛門のほうに送る動きを蠕動(ぜんどう)運動といいます。この動きが弱くなると便がなかなか直腸まで運ばれずに、便秘がちに……。加齢とともに大腸の動きが弱くなるだけでなく、食べる量や運動量が減ることも便秘の原因になる。高齢者は便秘になりやすい環境下にいます。男性では、リタイア後に便秘になる人が増えます。それまで便秘は未経験という男性も多く、悩みすぎて悪化させるケースも少なくありません。
直腸にたまった便塞栓を取り除くのに、とても効果的なのが浣腸です。飲む便秘薬の場合、服用してから効果が現れるまでに6~10時間かかります。浣腸は、直腸にダイレクトに作用するため、目安として3~10分で効果があらわれます。浣腸の中身は、グリセリン。化粧品や食品にも使用されている成分です。 おもに、次の3つの作用があります。
注入したグリセリンは血中に入ることがなく、便といっしょに排出されます。 便秘薬など複数の薬を服用していると、飲み合わせも気になるところですが、浣腸にはその心配はありません。 浣腸……と聞くと、子どもやお年寄りが使うもの、病院で使うもの、最終手段というイメージを持つかもしれません。実際には、年齢に関係なく、便秘になった時に手軽に使えます。また、町の薬局・薬店で手頃な価格で買えることも魅力ですよね。
健康な身体では、直腸に便がたまると脳がそれを感知して、「排便するように」という指令を出します。「便意」が起こって、スムーズな排便に至ります。この便意をガマンすることが多くなると、指令に鈍感になってしまうおそれがあります。朝、忙しくてトイレに行っている時間がない……。つい、外出先ではガマンしがち……。 でも、便意を感じたら、ガマンしない。このことがとても大切です。
便秘をきちんと治すには、生活習慣の見直しも大切です。便秘薬や浣腸を使うだけでは、根本的に治すことはできません。バランスの取れた食事、毎日の適度な運動、十分な睡眠をこころがけてください