下川道世 さん
大幸薬品株式会社
マーケティング本部 戦略学術グループ
薬剤師・医療環境管理士
かぜやインフルエンザ、ノロウイルス……などは、ウイルスに直接触れることによって感染します(接触感染)。せきやくしゃみの飛沫でも感染します(飛沫感染)が、接触感染にも注意が必要です。たとえば、ドアノブ。テーブルの上。パソコンのマウスやキーボード。トイレの便座。電車のつり革やエレベーターのボタン。エスカレーターの手すり……などは要注意です。
たくさんの人が触る場所ほど、ウイルス付着の可能性が高まります。ウイルスに触れた手で顔をこすったり、食べたりすると、ウイルスが体に入ってしまうのです。代表的な予防策として知られているのは、手洗い、うがい、マスク。このなかで有効性が確認されているのは、手洗いです。しっかり手と指を洗って消毒してください。
まず、手の洗い方を見直してみましょう。水にぬらしてチャチャッとすませていませんか?正しい手洗い方法は、意外に、知られていません。じつは、けっこう洗い残しがあるのです。さて、みなさんはふだん何を使って手洗いしていますか? 水道水だけ、石けん、薬用石けん、消毒液……などの使い分け方を、ご存じでしょうか?
手洗いには2つの役目があります。「洗浄」と「消毒」。それぞれに効果的な成分があります。まず、油や泥、汗やほこりなどの汚れを落とすのが、「洗浄剤」。液体石けんや固形石けんがこの代表です。一方、かぜやインフルエンザなどのウイルスや、大腸菌、サルモネラ菌などのバイ菌を殺菌するのが「消毒剤」です。店頭に並んでいる石けんには、「殺菌、消毒」と表示されている薬用石けんがあります。肌の殺菌消毒を目的として、消毒剤が配合されています。
消毒剤配合の薬用石けんを使っていても、正しい手洗いをしないと洗い残しがあります。一方、正しい手洗いには時間がかかり、頻繁に手洗いすると手荒れがおこり、傷口からウイルス・菌が侵入しやすくなります。そんなときに役立つのが手指消毒剤です。薬局・薬店などでお求めいただけます。
この手指消毒剤の有効成分は、エタノール、ベンザルコニウム塩化物など。主成分のエタノールはアルコールの一種です。アルコールはノロウイルスには効きにくいですが、最近はノロウイルスに効果のあるアルコールを配合した手指消毒剤が薬局・薬店などで市販されているので、ぜひ利用してみてください。パッケージに「幅広い/広範囲なウイルスや菌を消毒、除去する」と表示されているので、チェックしてみてください。
外出から帰ってきたときには、手指にウイルスやバイ菌がついている可能性が高い。手洗いだけでは、手洗いの時間・回数次第ではウイルスやバイ菌が残っていることがわかっています。まず、ハンドソープで洗ってから、手指消毒剤をお使いになれば安心です。食事の前やトイレ後、調理中にも手指消毒剤でシュッとすることが習慣になるといいですね。
水を使えない外出先、アウトドアでは、携帯用の手指消毒剤が重宝します。ただし、エタノールを頻繁に使用すると手が乾燥するので、保湿成分を配合した手指消毒剤をおすすめします。
手洗いの方法 | 残存ウイルス数 |
手洗いなし | 約1,000,000個 |
流水で15秒手洗い | 約10,000個 |
ハンドソープで10秒または30秒もみ洗い後、流水で15秒すすぎ | 数百個 |
ハンドソープで60秒もみ洗い後、流水で15秒すすぎ | 数十個 |
ハンドソープで10秒もみ洗い後、流水で15秒すすぎを2回繰り返す | 約数個 |
この冬場は、手洗いと手指消毒剤を併用して、かぜやインフルエンザの感染予防に役立ててください。