川津正俊(かわづ・まさとし)さん
株式会社クリニコ 企画情報部長
「エネルギーとたんぱく質が不足して、健康を保つのに必要な栄養が足りていない状態をいいます。いまどき低栄養?……と思われるかもしれませんが、めずらしいことではありません。
たとえば高齢の方は、徐々に食事の量が減っていくので、1日に必要な栄養をとれていない人が少なくありません。硬いものが噛めない、唾液が出にくい、食欲がわかないなどの加齢にともなう諸症状も、必要な栄養が足りていない「低栄養」の原因になります。
若い人でも無理なダイエットを続けたり、外食や不規則な食事で栄養がかたよると、低栄養状態をまねくおそれがあります。
低栄養状態が続くと、体の抵抗力や免疫力が低下するため、風邪やインフルエンザなどの感染症にかかりやすくなります。また筋肉量と骨量が減り、転びやすくなったり動きにくくなったりして、骨折のリスクも高まります。認知機能の低下につながるという指摘もあります。
ふだんから食事と運動に気を配ることがとても大切です。何より、1日3食、きちんと食べること。とくに意識したいのはたんぱく質です。高齢になるとどうしてもお肉を食べる機会が減りがちですが、お肉は良質なたんぱく質です。
しかし、食欲が低下している人に3食しっかり食べて……ということには、無理がある。その場合は、栄養補助食品を取り入れることも考えてみてください。
栄養補助食品は、食品なので、成分や味はさまざまです。デザート感覚で食べられるものも多い。サプリメントとのいちばんの違いは、おいしく食べられることです。形状には、ゼリー状、飲料、粉末、固形などがあります。食欲が落ちている方、高齢の方にはゼリー状か飲料タイプのものがおすすめです(表参照)。
たんぱく質、エネルギーともに不足がちな場合は総合的に栄養を補うタイプを選ぶのがよいでしょう。食事はきちんと食べられるが栄養がかたよりがちという方には、特定の栄養を補うタイプが適しています。総合タイプだと、カロリー過多になるおそれがあります。
必須アミノ酸であるBCAAを配合した特定タイプは、スポーツを楽しむ人にもおすすめです。スポーツ中の疲労回復や筋肉の増強にも有効です。
栄養補助食品の摂取量は、各自の栄養状態に合わせて調整(増減)してください。食事後のデザートに1本(1個)つけるのもおすすめです。3回は多い……場合は、朝食後だけでもOK。
とくに理由(ダイエットなど)もないのに体重が減ってきたら、低栄養のサインと考えてください。筋肉量の減少にも要注意です。両手の親指と人差し指で作った輪っかで、ふくらはぎのいちばん太いところを囲んでみてください。指の輪との間にすき間ができるようなら、筋肉量が減少しています。
このような状態になったら、食生活を見直しましょう。運動を増やすことも大切です。そのうえで、ふだんの食生活の中に、少しずつご自分にあった栄養補助食品を取り入れてみてください。気になることがあれば、かかりつけ医などに相談しましょう。