薬局やドラッグストアでは多くの医薬品が販売されており、誰もが1回は購入したことがあるのではないでしょうか。最近では国としても「セルフメディケーション」を積極的に進めるようになってきています。「セルフメディケーション」は世界保健機関（WHO）において、「自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調は自分で手当てすること」と定義されています。「頭が痛い･･･」、「胃腸の調子が良くない」、「風邪気味かも･･･」などの軽い症状がある際に市販の薬を上手に使うことも、この手当てのひとつです。

現在の日本では欧米に比べて、軽い体調不良であっても市販の医薬品を利用するよりも病院へ行くという人がたくさんいます。病状が悪化するのを防ぐために専門家に診てもらうという観点では良いのですが、日頃からのセルフメディケーションで病気を予防したり、症状を軽いうちに治すなど、健康の自己管理も大切です。

「スイッチOTC」とは、いままでは医師の判断でしか使用できなかった医療用医薬品の中で、長い間にたくさんの人に使われていて、比較的副作用が少なく安全性の高い成分を、一般用に切り替えた（=スイッチした）医薬品です。これまで一般のOTC医薬品は、効き目よりも安全性が重視されていましたが、スイッチOTC薬が登場したことで、効き目のよい薬が買えるようになり、ちょっと体調が悪いときに自分で治すことができるようになりました。その他にも、試験薬や禁煙補助剤などもスイッチOTCとして発売され、OTC医薬品は軽い症状を改善するだけではなく、病気の予防や生活の質の向上など、セルフメディケーションの中で幅広い役目を果たすことが期待されるようになりました。

ただし、スイッチOTC薬は今まで医療用として使われていた医薬品ですので、正しく使用しないと副作用などが起こることもあります。他の薬との飲み合わせが悪かったり、使ってはいけない症状などもあるため、必ず薬剤師に相談してから、用法・用量を守って正しく使用するようにしましょう。

最近ではさまざまなスイッチOTC薬が購入できます。OTC医薬品に「スイッチOTC薬」と明記されているわけではないので、ちょっと見ただけではわかりませんが、よく耳にする胃腸薬の「H2ブロッカー」や、湿布など外用剤として筋肉痛・関節痛薬などに用いられている「ジクロフェナクナトリウム」、解熱鎮痛薬の「ロキソプロフェンナトリウム」などの成分がこれにあたります。最近では抗アレルギー薬が数多くスイッチOTCとして市場に出てきて、花粉症などで今まで服用していた医療用医薬品が薬局でも購入できるようになってきています。

2017年1月から新たに施行された「セルフメディケーション税制（医療費控除の特例）」ではスイッチOTCが対象医薬品となっていますので、控除対象の識別マークもスイッチOTCの目印のひとつになります。

この他にもさまざまなスイッチOTC薬がありますので、薬剤師に気軽にご相談ください。また、スイッチOTC医薬品を含む全てのOTC医薬品は軽度な症状の治療や予防を目的としています。症状が改善しない場合や再発を繰り返す場合、悪化する場合は必ず専門の医療機関の受診が必要です。その判断がしづらい場合は薬剤師に症状と経過の相談をしてみましょう。

2017年1月から、従来の医療費控除制度の特例として、新たに「セルフメディケーション税制」が施行されました。これはきちんと健康診断などを受けている人が、一部の市販薬を購入した際に所得控除を受けられるという制度です。従来の制度では医療費として10万円を超える必要がありましたが、対象となるOTC医薬品の年間購入額が1万2,000円を超えた場合にも申請できるにようになりました。対象となる医薬品は現在スイッチOTCの83成分が含まれる医薬品で、この税制の対象になっているものの箱に『セルフメディケーション/税/控除/対象』という言葉がマークとして箱に記載されていますのでこれを目印に探せるようになっています。

日本国内で医療用にも使用されていなかった新しい有効成分を含んだ医薬品がいきなり一般用医薬品として承認されたものを「ダイレクトOTC薬」と呼びます。いきなりOTC医薬品になったものなので認められている成分の数はまだまだ少なく、現在ダイレクトOTCとして承認を受けているのは、毛髪用薬の「ミノキシジル」、むくみ等治療薬の「赤ブドウ葉乾燥エキス」、月経前症候改善薬の「チェストベリー乾燥エキス」の3種類の成分です。中でも「チェストベリー乾燥エキス」は医療用でもなかった月経前のつらい症状に効く薬として、世界中で広く使われています。使用の際は、薬剤師とよく相談し、使用上の注意を守りましょう。