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専属薬剤師監修のオリジナル記事「知っておきたいセルフメディケーションコラム」健康管理には、日頃から適度な運動と栄養バランスのよい食事に気をつけ、しっかりと睡眠時間をとり、自然治癒力を高めることが大切です。 かぜや軽いケガなどの軽度な体調不良は、OTC医薬品(一般用医薬品)を利用して、自分で手当てすること(セルフメディケーション)も健康管理に役立ちます。体との関係を知って上手に取り入れましょう。

2023.2.3

第57回 薬剤師がカフェイン離脱を試してみた

少し前にカフェイン離脱にチャレンジしました。
実感としてはかなりつらかったですが、やってみてよかったところもありましたので、今回は私の体験談もふくめてカフェインに関するお話です。
カフェイン離脱に興味はあるけどまだ試していないという方へ、ぜひご参考にしていただけたらと思います。

カフェイン離脱を試みた経緯

私事ですが、薬剤師とは少し異なる分野の勉強に興味が生まれ、昨年、某資格試験を受験しました。
年1回しか実施されない試験で、失敗すればまた翌年となってしまうため、絶対に落ちるわけにはいかない背水の陣で、勉強面はもちろん体調面でも万全の策をとる意気込みでした。
一次試験の筆記試験は7月初旬でしたので、事前予測としてはおそらくまだ梅雨明けしていない、じめじめとした空気の重い季節であろうと考えていました(実際には、例年になく早い梅雨明けで、快晴の猛暑でしたが)。
心配していたのは頭痛です。もともと、どんよりした天気の日には頭痛が起こりやすい体質で、試験に集中したいところに頭痛など起こってしまっては、思い通りのパフォーマンスをあげられなくなってしまうかもしれません。そこで思いついたのは、万が一頭痛薬を服用せざるをえない状況になってしまった時に、その効果を最大限に引き上げることでした。着目したのがカフェインです。

頭痛薬にも含まれるカフェイン

頭痛薬には、無水カフェインが配合されているものがあります。
これはカフェインの血管収縮作用に基づくもので、血管が拡張することによっておこる頭痛を軽減します。この作用を余すところなく発揮させるためには、まず自分の感受性を正常化する必要があると考えました。
もし、自分が少しでもカフェイン依存傾向(耐性が生じている状態)にあるとすれば、せっかくとりこまれたカフェインも十分な効果が発現しにくくなってしまうため、自分が依存状態なのかどうかはよくわかりませんでしたが、とにかくカフェイン離脱をやってみる価値はあるかなと思いました。
無水カフェイン配合解熱鎮痛薬
2,750円(税込)
解熱鎮痛成分「イブプロフェン」とその鎮痛効果を高める「アリルイソプロピルアセチル尿素」「無水カフェイン」を配合

薬剤師

~緊張型頭痛について~
ちなみに、緊張型頭痛に対してのカフェインの効果は期待できません。こちらは血管収縮による血行不良が原因となる痛みのため、カフェインは痛みを悪化させてしまう可能性があります。
私の試験当日の緊張型頭痛への対策としては、とにかくリラックスを心がけることと、周囲の迷惑にならない範囲で首、肩そして背中のストレッチをはさみました。
そして私のお気に入りアイテムですが、試験場に塗るタイプの鎮痛薬を持参しました。 昼休みにひと塗りしただけで、肩こりや首こりといった午前の疲れがだいぶ癒されました。コロナ対策での換気と猛暑によりエアコンが効きにくく非常に暑い室内でしたが、清涼感やほのかな香りが心地よく、持参して正解でした。

スティックタイプ鎮痛消炎薬
1,265円(税込)
フェルビナク(3%配合)が、肩・腰の痛みなどをとります。ほのかなフローラルグリーンの香りでニオイを気にせずオフィスなどで気軽に使えます。

カフェイン依存とは

そもそも今の自分は依存状態なのか?については、よほど何か不調がみられていないと判断が難しいところです。遺伝的要因や体格にもより感受性に個体差があるため、1日どのくらいの量をどのくらいの期間継続すると依存になるのかまで、明確には究明できていません。
ただ、長期的にカフェインを摂取し続けることにより、耐性が生まれることは動物実験では認められています。1)
耐性というのは、今までと同じ量を摂取しているのに効果を感じにくくなることです。 カフェインは体内に取りこまれるとアデノシン受容体というところに結合し、これにより作用を発現しますが、アデノシン受容体の数はカフェインの長期摂取により増加するといわれています。2)この受容体の数の増加が耐性につながります。
簡単に言い換えると、あるA受容体が3つあるとします。そこに結合する物質Aはこの時点では3つあれば十分ですが、継続的にA受容体の処理スピードを超えて物質Aが次々になだれ込んで来たとします。受容体はこれらのあふれかえった物質Aをなんとか処理しようと、受容体の数を増やそうと働きます。その結果として、A受容体が10個や20個まで増えてしまった場合、当初は十分であったわずか3つだけの物質Aでは反応しにくいということです。

カフェイン離脱の実態

私の場合、主観としては自分が多量に摂取しているとは思っていませんでしたが、朝1杯のコーヒーと、日中はお茶を500mL以上飲むことが習慣でしたので、もしこれらの一切がゼロになれば、多少なり受容体が減るだろうと仮説をたて、実践しました。
 離脱症状その1 頭痛について 
この頭痛は、カフェインが体内に入ってくることにより血管が収縮することが習慣化している状態のところに、突然カフェインが入ってこなくなったことで、血管がいつもどおりに収縮できなくなることに起因します。
私は1週間くらい続き、非常につらかったです。「このおかげで私の受容体は減っているんだ!」と自分を励ましながら耐えましたが、どうしても我慢ができないときだけカフェインの入っていない頭痛薬を使用しました。
カフェイン無配合
1,782円(税込)
痛み、熱を抑える成分「アセチルサリチル酸」配合。眠くなる成分を含まみません。

 離脱症状その2 眠気について 
カフェインはアデノシン受容体に結合する話を前述しましたが、カフェインがとりこまれなくなれば、この受容体にはアデノシンが優先して結合します。アデノシンには神経を鎮静させる働きがありますので、こればかりが結合すれば眠くなるのも当然です。
私も確かに感じましたが、試験勉強をしないとならない緊張感も強かったので気合で乗り切った気がします。

頭痛も眠気も、コーヒーの1杯でも飲めばおそらく緩和したのでしょうけれど、それでは離脱計画が長期化してしまうため、1ミリのカフェインも取り込まないことを徹底しました。私の場合は試験合格がかかっていたので必死でしたが、そこまでの切羽詰まった状況でないのであれば、もう少しゆるめに、長期計画として段階的にカフェイン摂取量を減らしていくなどでもよいと思います。
カフェイン

離脱後の考察

当初の目標であった試験当日は、幸いにも頭痛が起こらずに済みましたが、やはり日常のカフェイン摂取を止めて以降、無水カフェイン含有の医薬品の効きがよいような気がしています。あくまでも主観ですが、仮説どおりに受容体は減ってくれたと信じています。
さらに、頭痛の頻度が減りました。もともと頭痛持ちで月に数回は頭痛薬を服用する体質でしたが、今は月に1回あるかないかくらいです。もしかして今まで、カフェイン誘発頭痛(血管収縮により血行不良になっていた)だったのではないかなと思えています。これは大きな収穫です。

また、カフェイン離脱をすると気分が安定したりメンタル不調が改善されるというネット情報を見たことがありますが、これについては私はよくわかりませんでした。相変わらずイライラする時はします(笑)。
ただ、このメンタル不調への改善効果の可能性はおそらくあると思います。私個人の推察ですが、調剤薬局勤務時代に、気管支拡張薬のテオフィリンの服用を開始した小児喘息の患者さんのお母さまから、お子さんが突然に怒りだしたり、かんしゃくを起こすようになったとのご相談を受けたことがあります。
テオフィリンはカフェインと同じく、キサンチン誘導体とよばれる分類に属していて、同じアデノシン受容体に作用しますので、その関連性はありえることです。もしこの患者さんと似たように、これまでカフェインによってイライラしたり、穏やかな気持ちを保てない状態になっていたとすれば、カフェインをやめることで改善は期待できると考えられます。

おわりに

多くはないと思いますが、もし私のように資格試験などの大事なイベントのためにカフェイン離脱をやってみようと思われる方がいましたら、ぜひ気をつけていただきたいことがあります。
1つめは直前にやってはいけないということです。離脱自体にそこまでの長期は必要ありませんが、イベントの準備にあてるための貴重な直前期に離脱症状と闘うのでは、本番に向けて万全な体制がとれなくなってしまうかもしれませんので。
2つめはカフェインは利尿作用もありますので、お手洗い事情もあわせてご検討ください。 ちなみに今回私は頭痛薬に対しての対策でしたが、カフェイン含有の栄養ドリンクにも応用できそうです。私は栄養ドリンクが大好きなので、アデノシン受容体が減っている今、栄養ドリンクを摂取したら以前より効果が感じやすくなるのではないかなと期待しています。
必ずしもカフェインは体に悪いものではないため、カフェイン離脱はみなさんにおすすめするものでもないと個人的には思いますが、頭痛でお悩みだったりなんとなくカフェイン摂りすぎかなと思う節があるようでしたら、1つの選択肢にはなると思います。私はやってみてよかったです。