専属薬剤師監修のオリジナル記事「知っておきたいセルフメディケーションコラム」健康管理には、日頃から適度な運動と栄養バランスのよい食事に気をつけ、しっかりと睡眠時間をとり、自然治癒力を高めることが大切です。
かぜや軽いケガなどの軽度な体調不良は、OTC医薬品(一般用医薬品)を利用して、自分で手当てすること(セルフメディケーション)も健康管理に役立ちます。体との関係を知って上手に取り入れましょう。
2020.7.30
第51回 紫外線対策
紫外線の多い季節が始まります。
今年は密を避けるために屋外の活動が増え、マスク焼けも気になりますね。
今回は、紫外線対策の必需品である日焼け止めについて、上手に活用していただくためのお役立ち情報をご紹介します。
スイッチOTC
日焼け止めの成分とは1)
日焼け止めの有効成分は、紫外線吸収剤と紫外線散乱剤に分けられます。
|
紫外線吸収剤
(成分が紫外線を吸収する性質をもつ) |
紫外線散乱剤
(粉末自体が紫外線を吸収・散乱する) |
代表的な成分 |
・メトキシケイヒ酸オクチル
・ジメチルPABA オクチル
・t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン など |
・酸化亜鉛
・酸化チタン |
特徴 |
・成分により吸収できる波長域が異なる。
(UVB 吸収剤、UVA 吸収剤)
・溶解しているため塗った時に白く見えにくい。
・まれにアレルギーをおこす場合がある。 |
・酸化亜鉛はよりUVAを、
酸化チタンはよりUVB を防ぐ。
・粉末で、塗った時に白く見えやすい。 |
紫外線吸収剤は紫外線防御効果が高く、紫外線散乱剤は肌に優しい特徴があります。
ほとんどの製品は、これらの成分がいくつか組み合わせて処方され、その配合量や配合比率によって効果の強弱(PA、SPF)が変わります。
「ノンケミカル」「紫外線吸収剤フリー」などの表示がされている製品は、紫外線散乱剤のみが配合されています。その代表である酸化亜鉛及び酸化チタンは、日焼け止めへの規制を強化しているFDA(アメリカ食品医薬品局)においても、その有効性と安全性が認められた2成分として選ばれています2)。
紫外線吸収剤を含まない 日焼け止め
SPF45/PA++++
2,420円(税込)
やさしい使い心地でしっかり紫外線ガード!
うるおいバリアサポート成分(キシリトール)配合
SFP31/PA++
3,300円(税込)
肌にやさしい低刺激処方。防腐剤(パラベン)無添加・無香料・無着色・鉱物油無添加・アルコールフリー
日焼け止めとは、これらの紫外線防御を目的とした成分に加え、保湿剤、消炎成分、塗りやすくするための添加剤を何種類も混ぜ合わせてつくられています。
用途に分けた選び方1)
効果が強ければよいというわけではなく肌への負担も考え、どのような場面で使用するかに合わせて、PAとSPFをもとに適した強さを選びましょう。また、ローション、クリーム、ジェル、スプレーなどの剤形別の使いやすさや耐水性もあわせて考えると効果的です。
紫外線対策
デリケートなお肌の方へ、肌負担の少ないSPF30以下の日焼け止め
SPF25 PA+++
1,045円(税込)
水のようにお肌にさっとなじみ、赤ちゃんから大人まで使えます。
プッシュしてササッと塗れるポンプ容器
SPF30 PA++
2,640円(税込)
伸びが良くお肌への負担が少ないウォーターベースの日焼け止め
炎天下や特に紫外線の強いシーンで活躍するSPF50+/PA++++
美容成分配合
1,100円(税込)
うるおいが続いて、なめらかに伸びてお肌に溶け込むようになじむ、やさしい使用感!
無添加
660円(税込)
しっとりみずみずしいエッセンスタイプ。外的刺激(紫外線・乾燥・花粉・PM2.5)をプロテクト。
水のレジャーにはスーパーウォータープルーフ
SPF50+ PA++++
1,320円(税込)
スプレーすると、ジェルに変化して肌に密着し、ムラなく塗り広げられるので強力な紫外線からも肌を徹底ガード
SPF50+ PA++++
1,100円(税込)
UVカットしながら、色と光をコントロールし肌トーンアップ!透明感を引き出すラベンダーカラーの日やけ止め
SPF50+ PA++++
770円(税込)
強力UVカットしながら、きれいな素肌に導くブルーカラーの日やけ止め
髪にもつかえるスプレータイプ
1,078円(税込)
髪にも使える透明サラサラUVスプレー
紫外線
日焼け止めにまつわる疑問
まず、人体に使用する成分に対しての厚生労働省の承認区分は、作用の強さの順に
(1) 医薬品・・・病気を診断、治療又は予防するものなど
(2) 医薬部外品・・・病気を予防するもの、医薬品より作用が緩和であり厚生労働大臣の指定したものなど
(3) 化粧品・・・身体を清潔に美しくするものなど
に分けられています。
「薬用」とは、このうちの「医薬部外品」として承認をとっている製品に使われる言葉です。
よって、化粧品にはない効果があり、医薬品に比べれば緩やかですが、作用が認められるとして厚労省の審査を通った信頼できる成分が含まれています。
しかし、すべての医薬部外品に「薬用」の表示がされているわけではなく、その表示がない場合でも医薬部外品であれば同等の作用が期待できます。
医薬部外品は必ず「医薬部外品」と表示されていますので、ご参考にしてください。
SPF50+ PA+++
医薬部外品
1,760円(税込)
紫外線散乱剤の少ない量で高いSPF値と肌負担感(被膜感・乾燥・落としにくさ)がない日焼け止め
SPF50+ PA++
医薬部外品
968円(税込)
ニキビ予防しながら紫外線をしっかりカットし、のびの良い乳液タイプ(肌色)の日焼け止め
“飲む日焼け止め”というネーミングから、塗る日焼け止めの代わりに使えるのではという期待を抱いてしまいそうですが、残念ながらそこまでの十分なエビデンスはそろっていません。
いくつかの調査結果を以下にご紹介します。
日焼け止めとしてではなく、日焼け後のケアに効果があるというのがポイントです。
まず代表的な成分の1つである「Nutroxsun™(ニュートロックスサン)」についてです。
紫外線による皮膚の老化に対する効果3)
方法: 1日100mg又は250mgを経口投与
評価項目: 紫外線照射による紅斑及び過酸化脂質量、シワの深さと肌の弾力
結果: 服用2週間で改善が認められた
UVBに対する防御効果(SPFがわかる試験)4)
方法: 1日250mg経口投与
評価項目:最小紅斑量(MED)*の変化を測る
結果: 服用8週間後 34%増加(p<0.05)
服用12週間後 56%増加(p<0.01)
これはSPFに換算すると、8週間飲み続けてSPF1.34となり、12週間でSPF1.56となることを意味します。**
*最小紅斑量(MED)とは、太陽光に近似したランプを用い、5~6段階の量の紫外線を人の背中5~6箇所にそれぞれ照射し、翌日赤くなった場所のうち1番少ない紫外線量をいいます。
**SPFとは、紫外線対策をしなかった場合に比べて、何倍の紫外線量で赤くなるかを表します。よって「SPF = 対策をしたMED/対策しない時のMED」となります。
以上より、紫外線をあびた後の肌の回復には効果的と考察されますが、紫外線そのものをブロックする作用はあまり期待できません。
効果がみられるまで継続的に摂取する必要があることより、外出前に塗るだけの従来の日焼け止めの代わりとして使用することは難しいでしょう。
そのほか、飲む日焼け止めの代表成分である「Fernblock®(フェーンブロック)」(PLエキスともいわれています)についても同様に、紅斑などの紫外線によるダメージを改善した調査結果はあるものの5)、高い紫外線防御効果を発揮したデータはないようです。
おそらく本当です。根拠となるデータはマウスを使用した試験のみのため、人間で立証されたとまでは言えませんが、人間においても同様のメカニズムが考えられます。
マウスの体全体をアルミホイルでおおい、目のみに紫外線を照射した試験では、以下の事実が判明しました。
・目にUVBを照射したマウスの耳の表皮メラニン細胞が増加した。
・目にUVBを照射したマウスでは、血漿中のメラニン細胞刺激ホルモンが増加した。
・下垂体(脳内でホルモン分泌をコントロールしている)を切除したマウスの目にUVBを照射しても、メラニン細胞は活性化しなかった。など
まとめると、目から入ったUVBは下垂体を通じてメラニン細胞刺激ホルモンの産生を促進し、皮膚でのメラニン細胞の活性化を引きおこしていることがわかります。
目から入る紫外線が皮膚の日焼けにつながる可能性をおわかりいただけたでしょうか。
サングラスや帽子をうまく取り入れ、皮膚に加えて目の防御も心がけると、よりシミ予防の強化になりますね。
紫外線対策
以上をご参考に紫外線対策を万全に備え、心晴れやかな夏をお迎えください。
(参考文献)
1)
環境省 紫外線環境保健マニュアル2020
2) FDA News Release “FDA advances new proposed regulation to make sure that sunscreens are safe and effective” February 21, 2019
3) Nobile V. et al. “Skin photoprotective and antiageing effects of a combination of rosemary (Rosmarinus officinalis) and grapefruit (Citrus paradisi) polyphenols.” Food Nutr Res. 2016, 60, 31871. PMID: 27374032
4) Pérez-Sánchez A. et al. “Protective effects of citrus and rosemary extracts on UV-induced damage in skin cell model and human volunteers.” J Photochem Photobiol B : Biology. 2014, 136, 12-18. PMID: 24815058
5) Middelkamp-Hup MA et al. “Oral Polypodium leucotomos extract decreases ultraviolet-induced damage of human skin.” J Am Acad Dermatol. 2004, 51(6), 910-918. PMID: 15583582
6) K. Hiramoto et al. “Ultraviolet B Irradiation of the Eye Activates a Nitric Oxide-dependent Hypothalamopituitary Proopiomelanocortin Pathway and Modulates Functions of alpha-‘Melanocyte-stimulating Hormone-responsive Cells.” Journal of Investigative Dermatology. 2003, 120(1), 123-127. PMID: 12535208