管理栄養士がお届けする、高齢者や介護に役立つ「栄養と食事コラム」です。近年、高齢者の低栄養(栄養不足)が原因で起こる様々な心配が増えてきています。
このコラムでは、高齢者や介護現場で必要な知識や役立つ情報を発信していきます。
食事のバランスと質を考えて食生活を見直し、健康的な生活を送りましょう。
2017.11.22
第35回 転倒予防と栄養
高齢者の転倒予防と栄養
65歳以上の要介護者の介護が必要になった主な原因は、「脳血管疾患」が17.2%と最も多く、次いで「認知症」16.4%、「高齢による衰弱」13.9%、「骨折・転倒」12.2%となっています。とくに女性では、「骨折・転倒」は、「認知症」に次いで2番目に多い原因となっています。
65歳以上の要介護者の介護が必要になった主な原因は
出典:内閣府「平成27年版高齢社会白書」より
高齢者は家庭内事故が多く、最も多い事故時の場所は「居室」
65歳以上の高齢者が最も怪我をしやすいのは住宅で、事故時の場所をみると、「居室」45.0%、「階段」18.7%、「台所・食堂」17.0%となっています。居室や階段などでの転倒が原因で、そのまま寝たきりになってしまうことも少なくありません。大きな段差はなくても小さな段差でつまづいたり、電気コードやじゅうたんに足をとられるといったこともあります。高齢者の転倒の原因は様々で、加齢による視覚やバランス機能の変化、筋力低下、疾患や服薬状況などが考えられます。
高齢者の家庭内事故
出典:内閣府「平成27年版高齢社会白書」より
転倒予防に有効な3つ
「骨粗しょう症の予防と治療ガイドライン2015年度版」では、転倒予防には以下の3つが有効とされています。
(1) 運動(筋力増強訓練、バランス訓練、歩行訓練、柔軟訓練など)
(2) ビタミンDの補充
(3) ヒッププロテクターの装着(とくに施設入居高齢者)
高齢者が転倒した時に骨折しやすい部位は、腕の付け根(上腕骨)、手首(橈骨遠位端)、背骨(脊椎)、太ももの付け根(大腿骨頚部)です。このうち大腿骨頚部骨折では、回復に時間がかかり、寝たきりになってしまうことが多くあります。このような骨折予防と転倒予防のためには、ビタミンDとともにカルシウムやアミノ酸(BCAA)も必要です。これらの栄養素の骨折減少や転倒予防の効果は、世界中で研究が行われ、その有効性がたくさん報告されています。
ビタミンDは、食品からも摂れますが、日光(紫外線)を浴びることで皮膚で作られます。しかし屋外にいる時間が短くなりがちな高齢者は、ビタミンDが不足しがちです。下のような食品からビタミンDを摂りつつ、1日10分でもできるだけ日光を浴びる時間をもつことが大切です。カルシウムやアミノ酸が不足なく摂れていても、ビタミンDが不足していると、転倒予防の効果も十分に出すことができません。
とろみ剤はきちんと計量、すり切りで!
ビタミンD カルシウムの吸収を高め、カルシウムが骨に沈着するのを助けます
★1日目安量:5.5μg
食品名 |
常用量(g) |
含有量(μg) |
いわし丸干し |
1尾 |
40 |
20 |
かじき |
1切れ |
100 |
12 |
かつお |
1切れ |
100 |
22 |
紅鮭 |
1切れ |
100 |
33 |
ほんまぐろ |
4切れ |
70 |
13 |
うなぎ蒲焼 |
1串 |
60 |
11 |
きくらげ(乾) |
4個 |
1 |
4 |
しいたけ |
2-3枚 |
50 |
1 |
干ししいたけ |
2-3枚 |
10 |
9 |
まいたけ |
1/2パック |
20 |
0.6 |
カルシウム 健康な骨や歯をつくります
★1日推奨量(男性700mg、女性650mg)
食品名 |
常用量(g) |
含有量(mg) |
牛乳 |
コップ1杯 |
200ml |
220 |
スライスチーズ |
1枚 |
15 |
95 |
ししゃも |
3尾 |
60 |
198 |
しらす干し |
1人前 |
20 |
104 |
大根葉 |
1人前 |
70 |
182 |
モロヘイヤ |
1人前 |
50 |
130 |
小松菜 |
1人前 |
70 |
119 |
アミノ酸(BCAA) 筋肉量を維持・増加させます
食品名 |
量 |
BCAA量(mg) |
あじ |
1尾 |
3045 |
さんま |
1匹 |
3055 |
まぐろ(赤身) |
5切れ(60g) |
2700 |
鶏肉(もも肉) |
100g |
2790 |
鶏肉(胸肉) |
100g |
3560 |
牛肉(サーロイン) |
100g |
2360 |
卵 |
1個 |
1190 |
高野豆腐 |
1枚 |
1600 |
納豆 |
1パック |
1445 |
木綿豆腐 |
1/2丁(150g) |
1815 |
牛乳 |
コップ1杯(200ml) |
1428 |
プロセスチーズ |
25g |
1275 |
肉・魚・卵・大豆製品・牛乳等のたんぱく質を多く含む食品を摂ることで、BCAAを取り入れることができます。
栄養補助食品には、ビタミンD、カルシウム、アミノ酸(BCAA)が強化されたものが売られています。予防目的として、このような食品で栄養素を十分補給をしながら、少し日光を浴びてお散歩などの運動をすることで、リスクの軽減が期待できます。また、万が一転倒した場合に備え、骨折予防としてヒッププロテクターを履いておくと、少しでも衝撃を緩和することができます。ヒッププロテクターはとくに施設入居高齢者で多く使用されており、骨折のリスクが減ることが報告されています。
ビタミンD
918円(税込)
ビタミンDをより積極的に取りたい方に
カルシウム
5,940円(税込)
栄養機能食品(カルシウム)
必須アミノ酸(BCAA)
216円(税込)
たんぱく質10g、ビタミンD、BCAA2500mgを含んだ栄養補給ゼリー飲料
必須アミノ酸(BCAA)
238円(税込)
アミノ酸のロイシン、シトルリンやビタミンD、カルシウムを配合
ヒッププロテクター
7,020円(税込)
転倒時の大腿骨への衝撃を緩和
転倒防止くつ下
2,037円(税込)
つま先アップで、つまずきにくい!
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