管理栄養士がお届けする介護コラム「栄養と食事」近年、高齢者の低栄養(栄養不足)が原因で起こる様々な心配が増えてきています。
このコラムでは、高齢者や介護現場で必要な知識や役立つ情報を発信していきます。
食事のバランスと質を考えて食生活を見直し、健康的な生活を送りましょう。
2016.3.28更新
Vol.26 栄養素~亜鉛~
高齢者の6割がミネラルである「亜鉛」が不足しているといわれています。亜鉛は、たんぱく質やホルモンの合成、細胞の生成などに関わっています。亜鉛が不足すると、とくに高齢者では、食欲不振、創傷治癒の遅れ、味覚障害、皮膚障害、乾燥、口内炎、免疫力の低下などがあらわれ、高齢者のADL(日常生活動作(Activities of Daily Living))の維持・向上やQOL(生活の質(Quality of Life))の保持に大きな影響を及ぼします。
また介護において、床ずれともいわれる“褥瘡”の予防や治癒にも、亜鉛が大きく関係しています。そのため「褥瘡の予防・治療ガイドライン」では、亜鉛1日あたり15mgが必要と記載されています。亜鉛15mgとは、牡蠣9個、豚レバー210gに相当します。
とくに褥瘡に関係しない、健康人を対象とした亜鉛の1日の推奨量は、1日に男性11~12mg、女性9mgのため、食事量が少ない高齢の方の褥瘡対策となると、栄養補助食品などを用いながら亜鉛を補っていく必要があります。
●亜鉛の多く含まれる食品
食品名 |
100g含有量(mg) |
1回使用量 |
目安量(g) |
含有量(mg) |
牡蠣 |
13.2 |
60(5-6個) |
7.9 |
和牛かた赤肉 |
5.7 |
100 |
5.7 |
和牛もも肉 |
4.4 |
100 |
4.4 |
豚レバー |
6.9 |
60 |
4.1 |
牛レバー |
3.8 |
60 |
2.3 |
うなぎ蒲焼き |
2.7 |
60(1串) |
1.6 |
あさり缶詰(味付け) |
3.2 |
50 |
1.6 |
ピュアココア |
7.0 |
10g(大さじ1) |
0.7 |
牛乳 |
0.4 |
210g(200ml) |
0.8 |
亜鉛が足りているかどうかの判断は、血液検査のデータで知ることができます。血清亜鉛値が基準値(70~150µg/dL)以下であれば、亜鉛が不足している可能性が高いため、強化して補充する必要があります。
食べ物から摂取された亜鉛は小腸で吸収されますが、その吸収率は約30%といわれています。そして年齢とともに亜鉛の吸収率も低下します。
●亜鉛の吸収を助けるもの
肉・魚介類などの動物性たんぱく質やビタミンC、クエン酸です。ビタミンCは、クエン酸のキレート作用(ミネラルを包みこんで吸収を高める)を強める働きがあるため、梅干しやレモンのように両方を同時に摂取すると、亜鉛の吸収率を高めます。
●亜鉛の吸収を妨げるもの
カルシウム、フィチン酸、多すぎる食物繊維、リン酸などです。フィチン酸は、鉄やカルシウムなどミネラルと結合し、体内への吸収を阻害するものとされています。また、加工食品に多く含まれるリン酸も亜鉛の吸収を妨げます。
「亜鉛」という栄養素一つでも、不足すると様々な症状が現れます。症状や血液検査の結果から気づくよりも、予防の段階からしっかり摂るようにしましょう。
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