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からころ×e健康ショップ 連載企画!
2024年3月21日
健康レッスン1・2・3!

【第23回】認知機能サポートで注目される「エルゴチオネイン」とは?

あまり聞き慣れないかもしれませんが、認知機能のサポートが期待できるとして「エルゴチオネイン」というアミノ酸が注目されています。
キノコ類のほか、肉や魚、穀物など、さまざまな食材に含まれている成分です。
ふだんの食生活で上手に摂取し、認知機能のサポートに役立てましょう。

答えてくれた人

金沢大学

医薬保健研究域(薬学系)教授
加藤 将夫先生


加藤 将夫先生

エルゴチオネインは人に必要なアミノ酸

近年、脳の認知機能のサポートが期待できる成分が次々と発見され、さまざまな健康食品が販売されています。
エルゴチオネインはそのような成分の1つで、食物由来のアミノ酸です。肉、魚、玄米などの穀物、キノコ類などさまざまな食材に含まれています。
エルゴチオネインはヒトの体内では合成できないのですが、血液や臓器を調べるとかなり高いレベルで存在しています。なぜでしょうか?エルゴチオネインを研究する金沢大学の加藤将夫先生にうかがいました。
「わざわざ食物から、体内に取り込んでいると考えられます」と言います。どういうことでしょうか。
「ヒトや動物には、体に必要な栄養成分を取り込み運搬する『トランスポーター(輸送体)』と呼ばれるたんぱく質が何百種も存在しています。各種のアミノ酸やビタミン、糖などに、れぞれ専用のトランスポーターがあるのです。エルゴチオネインにも専用のトランスポーターがあることが分かっています。専用のトランスポーターを持たない栄養成分も体に必要なものですが、トランスポーターがわざわざ取り込む栄養素はそれだけ体にとって必要とされていると考えられます」

言語記憶力や注意力のサポートに関与

では、エルゴチオネインを体に取り込むのは何のためなのでしょうか?
エルゴチオネインに抗酸化作用があることは以前からわかっていました。しかし、それだけではなかったのです。
加藤先生は実験を重ね、エルゴチオネインが人の認知機能のサポートに関与していることを発見しました。
「健常な方と軽度認知症の方を対象にした臨床実験で、12週間1日5mgのエルゴチオネインを飲みつづけると、言語記憶力と注意力が改善することが実証されました」
言語記憶力の変化
言語記憶力とは、人や物の名前を覚えてあとから呼び起こす能力のことです。注意力とは、1つの事柄に注意を集中させる能力のことです。
「昨今、認知機能のサポートが期待できる成分が数多く報告されていますが、エルゴチオネインは専用のトランスポーターが取り込んでいる点が特徴です」
エルゴチオネインはキノコ類や菌類など、原始的な生物に含まれています。
「とても興味深いことに、エルゴチオネインのトランスポーターはヒト以外の動物(魚を含む)にもあります。動物も、自分自身ではエルゴチオネインをつくれないので、キノコ類や海藻などを取り込む必要があるのでしょう。つまりエルゴチオネインは、多くの生き物にとって有用である可能性があります」 
ただし、ヒトの脳にどのように作用し認知機能にどのように関与しているのかについては、さらに詳しい研究が必要だと加藤先生は言います。

肉や魚など身近な食材に多く含むのはタモギタケ

エルゴチオネインは、じつはさまざまな食材に含まれています。
「先ほど、他の動物もトランスポーターを持っているという話をしましたが、牛肉や豚肉、魚肉などにもエルゴチオネインは含まれています。また、玄米などの穀類にも含まれています。つまり、私たちが食べている食材の多くに含まれているのです。キノコの場合は、種類によって含有量に大きな差があります。とくに多く含むのがタモギタケです」
キノコ別のエルゴチオネイン含有量
タモギタケは、おもに北海道で自生するキノコで、栽培は北海道や東北地方で行なわれています。色はあざやかな黄色で、味はまろやか。エルゴチオネインは熱に強く、水に溶けやすいので、スープや鍋物などに入れるのがおすすめです。

近年、エルゴチオネインの効能が知られてきたことから生産量が増え、北海道・東北以外の地域でも販売されるようになりました。認知機能のサポートを期待するにはどれくらい摂取するといいのでしょうか。
「日本にはまだ詳しいデータはありませんが、平均して1日に2〜3mgはふだんの食事から摂取できていると考えられます。私たちの研究では、1日5mg摂取しつづけることで、認知機能の改善が期待できると考えています」
タモギタケを知らなかったという方も多いのではないでしょうか。店頭で見かけたら、一度調理してみませんか?
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イラスト:matsu