新薬の開発には、人を対象にした「治験」が必須です。ここで不可欠なのが「治験ボランティア」。
「信濃坂クリニック」(治験専門医療機関)を訪ねて、「治験ボランティア」の役割について取材しました
新薬が開発されても、厚生労働省から「薬」として承認を得るには、臨床試験が必要です。まず、動物実験がおこなわれ、次に実際に人に服用してもらい、安全性や有効性を確かめます。これが「治験」です。この治験には、「治験ボランティア」の協力が不可欠です。
治験には、大きく3段階あります。
【フェーズ1】健康な方に薬を投与し、安全性を確かめます。
【フェーズ2】患者さんを対象に、薬の有効性や適切な用法・用量を調べます。
【フェーズ3】患者さんを対象に、実際の治療に近い形で薬が投与されます。
薬の試験…と聞くと、「体に害はない?」と不安になる方も多いはずです。でも、ご心配なく。投与する薬の量を徐々に増やしながら安全性を確かめていくなど、細心の注意が払われています。
「新薬といっても本当に世界初の薬はごくわずかで、すでに海外で承認されている薬が多いのです。日本では、まだまだ『治験』が社会に根づいていません。十分な数の協力者を得ることが難しく(※1)、新薬の安全性や有効性を確認するのに時間がかかるというのが実情です。」
(左:医療法人社団信濃会理事長の藤田雅巳さん)
治験ボランティアに参加することのメリットは、大きく3つあります。まず1つ目として、精度の高い健康診断を受けられること。さらに、患者さんにとっては、より効果のある新しい薬に出会えるかもしれないこと。そして、健康な方にとっては、新薬の開発に貢献できること。
※1「信濃会附属治験ボランティア会」の登録者は25,000人
では、治験ボランティアに参加するには、どうすればいい?
治験専門医療機関と連携して事業をサポートしている東京臨床薬理研究所にうかがいました。
「ボランティアにご興味のある方は、どんなお薬の治験募集がおこなわれているか、気軽にお問い合わせください。登録いただい方には、ご希望に沿う治験が組まれたらすぐにご連いたします。治験に入る前に、健康診断があります。実際に治験に参加できるのは、血液検査結果などの諸条件をクリアされた方に限られます。次に、治験の目的や薬の内容、副作用についての説明があり、最終的にご本人の同意を得たうえで参加してもらいます。」
(左:東京臨床薬理研究所・募集課主任の内藤佑美さん)
治験には、入院型と通院型があり、フェーズ1の場合は入院型が一般的。2泊3日の短期のものから、10泊以上の長期のものも。入院中に、安全性を採血や採尿などで調べます。フェーズ2、3では、通院型が一般的。治験薬を服用しながら日常生活を送り、月に1回程度の通院で薬の効果を調べます。
一般的に、参加中の時間的拘束および交通費負担等として「治験協力費」もしくは「負担軽減費」の支払いがあります。「実際には、その治験の条件に適合した方だけが、スタートできます。「アルバイト感覚」で登録いただいても、なかなかお声がかからない場合もあります。若い方ばかりでなく、65歳以上のシニアの方のご協力も広く求めています。」(内藤さん)
効果的な新薬を少しでも早く世に送り出すためには、一人でも多くの「治験ボランティア」が不可欠です。ぜひ、ご協力ください。
▲入院型のボランティアの方のための食堂兼談話室
ご興味のある方、ご協力いただける方は、下記お問い合わせ先までお気軽にご連絡ください。
取材・文:長谷川敦 写真:柳大輔 編集:株式会社デコ(からころ編集部)
出典:からころ50号(2018年3月20日発刊) ※記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。