運動などによって感じる
筋肉疲労の原因物質は
乳酸だと長年言われてきました。しかし、それは誤りで乳酸はむしろ筋肉疲労を和らげ筋肉の動きを維持させてくれる物質だということが最近の研究で分かってきています。
では、筋肉疲労の真の原因は何なのでしょうか?現在、疲労の大きな原因のひとつと言われているのが
活性酸素です。
活性酸素は生命活動を行う中で日々産生されており、体内の酵素などによって速やかに処理され無毒化されています。しかし、処理が間に合わなくなると活性酸素が体内に留まり、生体を
酸化して、がんや生活習慣病、老化や認知症などあらゆる病気の原因となります。
運動によって急激に活性酸素の濃度が高まり筋肉の細胞が攻撃を受けると
筋肉細胞の膜が破壊されてつぶれてしまいます。特にランニングのような長時間続けて行う運動では、活性酸素が大量に発生するため、酸化による筋肉の損傷が大きくなります。
これが筋肉疲労の大きな原因となります。
筋肉疲労の元凶、活性酸素が溜まらないようにするために
抗酸化物質の積極的摂取をおすすめします。
抗酸化物質とは
酸化されやすい物質のことです。酸化されやすいので、生体が活性酸素によって酸化されるよりも先に酸化され、自身が酸化されることで生体を酸化から防御してくれるのです。よく知られている抗酸化物質に
ビタミンC、
ビタミンEや
α‐リポ酸 、
還元型コエンザイムQ10 、
アントシアニンなどがあります。
筋肉に負担をかける生活をしている人はこれらの抗酸化物質を積極的に摂取しましょう。
また最近、他を抜きんでた抗酸化物質として注目されているものに
アスタキサンチンがあります。
アスタキサンチンはサケやエビ、カニなどに多く含まれる赤い色素で、緑黄色野菜に多く含まれる
カロテノイドの一種です。
動物はアスタキサンチンを自ら作り出すことはできず、植物から摂取しています。産卵のために川を遡るサケは、たくさんの酸素を取り込むので体内で絶えず活性酸素が発生し筋肉に大きな負担がかかります。その活性酸素を消去するために筋肉中にたくさんのアスタキサンチンを備えていると考えられます。サケの身がピンク色をしているのはアスタキサンチンを筋肉内に取り込んでいるからなのです。
このように、運動によって発生する活性酸素に備えてあらかじめ筋肉内に備えておくことで疲れを残りにくくし回復を早めてくれるのです。
普段あまり使わない筋肉を使ったり同じ筋肉を使い過ぎた時に、数時間後から翌日、翌々日に発症する筋肉の痛みが
筋肉痛と呼ばれています。
筋肉痛のメカニズムについては諸説ありましたが、最近では運動によって傷ついた筋肉の線維を修復しようとするときに起こる痛みだと考えられています。激しい運動によって筋肉を構成している
筋線維や周りの
結合組織に微細な傷がつき、損傷した筋線維を修復するとき
炎症が起き、
刺激物質(ブラジキニン、ヒスタミン、セロトニン、プロスタグランジンなど)が生産され、筋膜を刺激して痛みを感じさせるというものです。
筋線維そのものには痛みを感じる神経がありません。痛み炎症が広がって刺激物質が筋膜に届くようになってから感じるため、運動後から痛みを感じるまでに時間差があると考えられています。
筋肉痛を予防するために、激しい運動の前には
BCAAを摂ることをお勧めします。BCAAとは人間の体内では作り出すことのできない必須アミノ酸の
バリン 、
ロイシン 、
イソロイシンの3つを総称したものです。
人間の筋たんぱく質中のBCAAの割合は約35%にもなります。従って、筋肉合成に果たすBCAAの役割は大きく、逆に、運動中に分解する量もかなりあると考えられています。
BCAAを摂取することによって、運動による筋たんぱく質の分解を防ぐことができます。運動前にBCAAを摂取することにより、血中と筋肉中のBCAA濃度が上昇し、摂取したBCAAが筋肉中で分解することにより、筋たんぱく質の分解が抑制されるからです。
BCAAを摂取すると筋肉痛の発現が抑制されるだけでなく、疲労感も優位に抑制されるという研究結果もあります。
また、トレーニングをすると筋肉が壊され
回復⇒超回復を経て前よりも強い筋肉になっていきますが、BCAAを摂取していると、このプロセスが強化され効率的に強い筋肉を作ることができるのです。
BCAAは運動
30分前から
2000mg以上を摂取すると効果的に血中濃度が上昇することが分かっていますので、運動30分前から運動中のこまめな摂取がポイントです。
時間が経てば回復する筋肉痛ですが、できることなら早く痛みから解放されたいものです。
筋肉痛になってしまったら、まず筋肉の血行を良くしましょう。蒸しタオルなどで患部を温めたり軽い運動やストレッチをすると血行が良くなります。しかし温め過ぎるとかえって血行が悪くなることがありますので10分~20分を目安にしましょう。
筋肉を使い過ぎて患部が熱を持っている時のみ、氷や冷却スプレーで10分~20分を目安に冷やします。熱が引いたら反対に温めて血行を促進しましょう。
痛みがひどくて我慢できない場合は
消炎鎮痛剤の入った塗り薬やシップを使うと楽になります。
消炎鎮痛剤には
インドメタシン、
フェルビナク、
ジクロフェナクナトリウムなどがあります。また、
ビタミンEも血行を促進し、筋肉痛を緩和します。
湿布には貼るとヒヤッと冷たい
冷湿布と、温かく感じる
温湿布があります。 さらに、薄くて患部にピッタリと貼りつくタイプの
テープ剤と、水分を多く含み柔らかいタイプの
パップ剤に分かれます。
成分が同じならどれを使っても消炎鎮痛効果に差はありませんので、冷やすと気持ちいい場合は冷シップを、温めると気持ちいい場合は温シップを選ぶと良いでしょう。また、テープ剤はしっかり貼りついて剥がれにくいのでよく動かす部分に向いていますが、かぶれることがありますので、かぶれやすい人はパップ剤を選ぶと良いでしょう。