歯周病とは歯の周りの組織が細菌に感染して炎症が起きる病気です。歯ぐきが赤く腫れたり出血する場合は歯肉炎、炎症が進んで歯を支えている骨や歯周組織が破壊されると歯周炎と呼ばれ、それらを総称して歯周病といいます。
歯周病には子供から大人まで多くの人がかかっています。初期の段階では自覚症状がありませんが、進行して歯周炎になると歯が揺れたり抜け落ちたりします。そればかりでなく、歯周病菌や菌の出す毒素が血流に乗って心臓に運ばれたり肺に入ったりすると、心臓の病気や肺炎などを引き起こすこともあり、また糖尿病の悪化につながることもあります。
歯周病が進行すると歯医者さんで治療しないと治りません。しかし、歯周病は生活習慣とも大きな関わりがあり、セルフケアで十分予防可能な病気です。毎日のセルフケアやチェックで歯周病の予防、初期段階での治療を心がけましょう。

歯が十分に磨けていないとプラーク(歯垢）という細菌の集まりが歯周ポケット（歯と歯ぐきの間の溝）にたまります。プラークを放っておくとやがて石灰化して歯石へと変化します。歯石ができてしまうと歯医者さんで取ってもらわなければなりません。プラークや歯石をためていると、歯周ポケットが深くなり更にプラークがたまりやすくなって歯周病を進行させます。 このような状況にならないためにも、毎日の歯磨きをしっかりしてプラークを取り除きましょう。 歯周病の予防には毎日の歯磨き剤に殺菌成分や抗炎症成分、歯質を強化するフッ素などが配合されたものを選ぶと効果的です。 歯磨き剤に含まれる歯周病に有効な成分と作用をご紹介します。

歯周病にビタミンＣが効果的なことが分かっています。コラーゲン繊維は歯ぐきの大切な構成要素のひとつで、歯と歯ぐきと歯槽骨を結びつける役割も果たしています。歯周病になると、このコラーゲン繊維が壊れ、歯ぐきがはれて出血するなどの症状が現れるのですが、ビタミンCは「コラーゲン合成促進効果」により壊れたコラーゲン繊維の再生を促進し、歯周病を予防します。 ビタミンＣ入り歯磨き剤を使ってブラッシングすると、コラーゲン繊維の産生量が通常の3～4倍にもなるとの研究もあります。
特にタバコを吸う人は、喫煙によってビタミンＣが破壊されてしまいます。1日10本以上タバコを吸っている人の歯周病リスクは吸わない人に比べて4～5倍になるとの統計データもあります。お口の健康のためにはタバコを吸わないことが望ましいのですが、ビタミンＣ入りの歯磨き剤でコラーゲンの再生を助けてあげるのも一つの方法でしょう。

正しい歯磨きの仕方は様々な場所で紹介されており、実践している人も多いでしょう。しかし、歯ブラシだけでは落としきれない汚れがあります。それは、歯と歯の隙間の汚れです。

歯ブラシは、歯の表面の汚れは落とすことができても、歯と歯の隙間の汚れは十分に落とすことができないのです。なんと、歯ブラシで除去できる歯と歯の隙間の汚れは半分程度と言われています。そのため、デンタルフロスを用いて汚れを落とすことが重要になってきます。フロスの習慣がない人にとっては面倒くさい作業ですが、歯医者さんを始めとする歯科関係者のほぼ全員が毎日デンタルフロスをしていると言われています。フロスはそれほどにやった方が良いことなのです。
デンタルフロスとは、弾力のある糸のような、歯と歯の隙間のプラークを除去する清掃用具です。糸状で適当な長さにカットして使用するものもあれば、持ち手がついたホルダータイプのものもあります。ワックス加工されているものは糸がバラバラになりにくく滑りが良いので歯の隣接面に詰め物があったり、歯と歯の間が狭い人におすすめします。ホルダータイプは糸の扱いが難しいお子さんやフロス初心者におすすめです。 フロスを通した後は、お口の中にプラークや食べかすを残さないよう、うがいをして洗い流しましょう。

虫歯は、虫歯の原因菌（ミュータンス菌など）が出す酸により、歯の成分であるカルシウムやリンが溶け出し、歯に穴があいた状態を指します。穴があいてしまうと歯医者さんに行くしか治療の方法はありませんが、虫歯になる一歩手前の初期虫歯の状態であれば、セルフケアで歯を再石灰化させ健康な歯に戻すことができます。
初期虫歯とは、歯に穴はあいていないものの表面が溶けてつやがなくなり、白く濁って見えたり、薄い茶色になっている状態のことです。

初期虫歯がある人や虫歯になりやすいと感じている人には、ていねいな歯磨きや歯間清掃で歯垢をきちんと落とし、更にフッ素によるケアをおすすめします。フッ素は歯や口中の粘膜にとどまることで歯の再石灰化を促進する働きがあります。フッ素が歯の再石灰化に良いと知っている人は多いと思いますが、せっかくフッ素配合の歯磨き剤を使用しても、その後のすすぎで全て流してしまってはあまり意味がありません。フッ素を口の中に長く残すために、すすぎは少量の水で１回で済ませましょう。
歯磨きの後、何回もすすぎをしたい人は仕上げにフッ素配合のジェルを用いてフッ素ケアをすると良いでしょう。 就寝中は唾液の量が減少するので、口中の自浄作用が減って菌が繁殖しやすくなる一方で、唾液によってフッ素が流されにくくなりフッ素ケアに適した時間帯ともいえます。就寝中にフッ素を口の中に残すためにも寝る前のフッ素ケアを習慣付けましょう。

初期虫歯に見られる表面の白濁や斑点は、菌が作り出す酸によって歯からミネラル（リンやカルシウム）が溶け出すことによって起こります。歯の再石灰化とは、失ったリンやカルシウムを補給しエナメル質の結晶を新たに形成することです。この新たなエナメル質の結晶の構成成分がハイドロキシアパタイトです。
健康なお口の中では唾液に含まれるリンやカルシウムを補充して再石灰化が行われていますが、様々な要因で唾液からの再石灰化が間に合わないと虫歯になってしまうのです。そのような場合はハイドロキシアパイト配合の歯磨き剤を使用することはとても効果的です。

虫歯の痛みには局所麻酔作用のある成分が使われます。局所麻酔薬にはジブカイン塩酸塩やアミノ安息香酸エチル などがあります。その他にも局所の痛みに効果のある成分があります。オイゲノールは丁子（チョウジ）という植物油の主成分で薬理作用として口腔内殺菌作用、局所麻酔作用、抗炎症作用があります。フェノールには強力な殺菌作用や鎮痛作用があり、ｄｌ-カンフルは患部を刺激することにより知覚を鈍麻させる効果があります。お腹の薬で知られている正露丸にも実は歯の痛みを一時的に抑える効果があります。これは正露丸の成分である クレオソートに強く神経を麻痺させる効果があるからです。歯の痛みに使用する場合は正露丸を虫歯の穴の大きさにちぎって詰めます。
どの薬も効果は一時的なもので、虫歯を根治させる薬ではありませんので、痛みが治まったら早急に歯医者さんに行きましょう。