日本人の4人に1人がかかると言われている花粉症。早い人では子供のうちに発症し、30~50代がピークと言われています。
花粉症と言えば春のスギ花粉が知られていますが、この他にヒノキ(4~5月)やイネ科の植物であるカモガヤ(5~6月)、秋にはブタクサやヨモギなど約60種類もの植物があり、1年を通して花粉症に悩まされる人も少なくありません。しかし、やはり一番多くの人が悩まされているのがスギ花粉による花粉症です。スギは植林後40年程で成木になり花粉を飛散し始めると言われていますが、戦後に植林されたスギの大半が今樹齢30年~40年となり大量の花粉を飛散させているため、年々花粉症の患者さんが増加しているのです。今年も既に花粉の飛散が始まっています。今年の飛散量はほぼ例年通りのようですが、量に関わらず症状は辛いものですね。今年こそセルフメディケーションで花粉シーズンを乗り切りましょう。
花粉症の主な症状は『くしゃみ』『鼻水』『鼻詰まり』と『目のかゆみ』です。他に顔や首などに痒みや湿疹が出たり、喉の痛みや咳が出る人もいます。花粉症の症状は風邪とよく似ているのですが、症状が2週間以上続く時や何もしなくても垂れてくるようなサラサラとした透明な鼻水が出る場合は花粉症を疑ってみてください。鼻水に粘り気や色が付いていたり発熱がある場合は風邪と考えて良いでしょう。
花粉症の症状はいずれも侵入してきた花粉をくしゃみで吹き飛ばす、鼻水で洗い流す、鼻孔を狭くして侵入を防ごうとするための身体の
免疫反応の結果として現れるものです。また、花粉による皮ふのかゆみや咳の症状も同様の免疫反応によるものです。
身体は異物を排除する時
“ヒスタミン”という物質を放出します。このヒスタミンが知覚神経を刺激して花粉症の諸症状を起こしますので、ヒスタミンをブロックする
“抗ヒスタミン薬”が花粉症治療薬となります。
以前は、花粉症の飲み薬と言えば副作用として眠気が出るのが悩みの種でしたが、最近では医師の処方せんがないと使用できなかった
医療用医薬品と同じ成分の薬を薬局でも買えるようにしたものがあります。このような薬を
“スイッチOTC”と言い、従来の抗ヒスタミン薬に比べ眠気が格段に少なく高い効果が期待できます。
ここではスイッチOTCのいくつかをご紹介します。スイッチOTCには作用の強い成分が含まれていることもあり、用法を守らないと思わぬ作用が出てしまうこともあります。説明書をよく読み、用法・用量を守って使用してください。
●花粉症は初期治療が効果的
花粉が飛び始めた頃、または症状がごく軽いうちに飲み始めると、花粉の飛散量がピークに達した頃でも症状が重くならなかったり、発症を遅らせたりすることが分かっています。毎年の症状が重く、楽にシーズンを乗りきりたいと考えている人は少し早めに薬を使い始めることをおすすめします。
鼻の局所治療も抗ヒスタミン薬が主流となります。スプレータイプのものが使いやすく、1日数回、直接鼻孔にスプレーして使用します。薬が鼻の粘膜に直接付着するので効果が高く速効性がありますが、7歳未満のお子さんには使用できません。
鼻をかんだ後に片鼻孔に1回ずつ噴霧します。薬を吸い込むように鼻で息をして、その後しばらくは鼻をかまないようにしましょう。
目薬には効果的なさし方があります。目薬をさした後に目をパチパチさせる人がいますが、実はこの方法は逆効果なのです。
私たちのまぶたの下は結膜嚢(けつまくのう)という袋状になっています。さした目薬は一時この結膜嚢に溜まって、そこから徐々に目の奥へと浸透していきます。浸透する前に目をパチパチさせると、まばたきの勢いによって薬が目頭にある涙点(るいてん)から鼻を通ってのどの方へ流れてしまい効果が薄れてしまいます。目薬をさした後は、目薬が涙点から流れ出ていかないように、しばらくまぶたを閉じるか、目頭を軽く押さえます。また、結膜嚢に入る目薬の量は1滴より少ないので、さす量も1滴で十分です。
目薬の容器の先がまぶたやまつ毛に付いてしまうと目の汚れが目薬の中に逆流して目薬が汚染される原因になりますので、先端が目に触れないように気をつけてください。
花粉症に用いる漢方薬の代表的なものは
「小青竜湯(しょうせいりゅうとう)」です。水のような鼻水が流れる、くしゃみが止まらないといった症状の原因は漢方医学では身体の
冷えによって体内の水分が特定の部分に偏って溜まっている
“水毒”が原因ととらえています。小青竜湯の配合生薬である、“麻黄(マオウ)”と“桂皮(ケイヒ)”が中心となって身体を暖め、 “細辛(サイシン)”“乾姜(カンキョウ)”“五味子(ゴミシ)”“半夏(ハンゲ)”が冷えた身体に溜まった水分を取り除いてくれます。
眠気がなく、短期間のうちに効果が出ますが、麻黄は心臓や血管に負担をかけることがありますので、高血圧や心臓病、脳卒中既往など、循環器系に病気のある人は慎重に用いる必要があります。
鼻詰まりの症状がひどく、くしゃみや鼻水の症状が治まっても鼻詰まりだけが残ってしまうような人は
「葛根湯加川キュウ辛夷(カッコントウカセンキュウシンイ)」を試してみてください。この薬は風邪によく用いられる葛根湯の処方に
“川キュウ(センキュウ)”と
“辛夷(シンイ)”という二種類の生薬を加えて、「詰まった鼻を通す」ことを目的に作られた処方です。辛夷とはコブシのつぼみのことで、昔から鼻詰まりの民間薬として使われてきました。
漢方薬は空腹時に飲んだ方が効果的ですので、できれば食前または食間に飲むようにしましょう。
食間とは食後2時間経った時です。