東もとまち
婦人科クリニック
亀井麻子院長
■プロフィール
日本産婦人科学会 専門医
日本思春期学会 会員
●ホームページ
http://www.motomachi-ladies.com/
女性の身体は、女性ホルモンによってコントロールされています。なかでも卵巣から分泌されるエストロゲンは、月経をつかさどるだけでなく、肌や髪をつややかにしたり、血管や骨をすこやかに保つなど、女性の健康や美容にかかわる大事な成分です。
年齢を重ねるとともに、卵巣機能は少しずつ衰え、エストロゲンの分泌も減少し、やがて閉経を迎えます。それにともない、これまで経験しなかったさまざまな不調に見舞われることがあります。
この不調が更年期症状です。症状のはじまりには個人差がありますが、一般に閉経前後の5年ずつ、計10年間を「更年期」と定義します(約9割の女性が45~55歳の間に閉経を迎えるといわれています)。更年期治療の主流は、ホルモン補充療法(エストロゲンを補充する)です。ただし、血栓や乳がんなどの副作用のリスクもあるため、敬遠する女性も少なくありません。日本では、副作用が少ないといわれる漢方治療を選ぶ方が多いというのが現状です。
エストロゲンに似た働きをするものに、「大豆イソフラボン」があります。しかし近年、その効果には個人差があることがわかってきました。さらに最近の研究で、この個人差の原因が、大豆イソフラボンに含まれるダイゼインが腸内細菌によって代謝されることで生まれる「エクオール」という成分であることがわかりました。大豆イソフラボンよりもエストロゲンに近い働きをするので、「スーパー・イソフラボン」として注目を集めています。
「エクオール」のすぐれた効果については、さまざまな研究報告が出ています。更年期の代表的な症状のホットフラッシュ(※)の頻度が減少する、骨密度の低下を抑制する、血管拡張作用によってシワを改善する…などです。
しかし、「エクオール」を産生する腸内細菌はすべての人が持っているわけではありません。日本人女性で約5割、20代までの若年層では2~3割しか産生能力がありません。いくら大豆イソフラボンを摂取しても、エクオールをつくれない人が約半数もいるのです。この「産生できる/できない」は、尿検査で簡単に調べることができます。
※急に顔がほてったり、汗が出るなどの症状のこと。
さらに、エクオールは、数日でほぼ体から排出されます。つまり、体内に蓄積できないのです。 最近、国内でもエクオールを含有するサプリメントが登場しました。体内で産生できない人はもちろん、産生できる人も、毎日のように大豆食品を食べるのは大変です。サプリメントは、簡単に「エクオール」を摂取できるとても便利で効果的な方法なのです。
サプリメントを摂取しはじめたら、まずは肌の調子がよくなったという声を聞きます。じつは、更年期症状や骨粗しょう症の予防のために、私も摂取しています。更年期症状があらわれはじめる40代は、女性にとって、いちばん大変な時期。子育てや仕事、親の介護などを抱えながら生活しなければならず、自分の体調管理は、あとまわしになりがちです。「エクオール」は、心とカラダをすこやかに保つ、頼りになる存在です。(談)