ホーム  >  介護・栄養と食事コラム  >  介護コラム33[認知力の低下による食事の問題]

管理栄養士がお届けする、高齢者や介護に役立つ「栄養と食事コラム」です。近年、高齢者の低栄養(栄養不足)が原因で起こる様々な心配が増えてきています。 このコラムでは、高齢者や介護現場で必要な知識や役立つ情報を発信していきます。 食事のバランスと質を考えて食生活を見直し、健康的な生活を送りましょう。

2017.5.15

第33回 認知力低下による食事の問題

食事
高齢になると、認知力の低下により食べ方や姿勢、嚥下の仕方などに様々な問題が出てくることがあります。訓練で改善されることもありますが、周りが少し改善策をとることで、食事をとりやすくなることもあります。とくに認知症の場合は注意が必要で、最初は自分で食事ができていても、だんだんと食べない、食べたことを忘れる、食べ物を認知できない、口を開けない、口に詰め込む、他の人の食事に手を出すといった障害が出てきて、自分一人で食べることが困難となります。まずは認知症のタイプ別に、食事であらわれる問題の特徴をあげてみましょう。

認知症タイプ別 食事であらわれる問題の特徴

アルツハイマー病

・食事をしたことを忘れる
・順番に食事をすることが難しい
・箸は上手く使えることがある
・ずっと噛んでいる
・無理に口の中に物をためこむ
・食物でない異物を食べようとする
・嚥下機能が低下する

脳血管性疾患

・見えない空間があるため、食事の存在に気づかない
・訓練で改善されることもある
・手の麻痺によって、箸やスプーンがうまく使えない
・片手しか使用できず、食器をおさえられなくて食べにくい

レビー小体型

・食事に集中できなくなる
・手の震えなどで、食べ物がうまくつかめない
・幻視で食べ物に虫が入っているように見える
・視覚空間障害で、食べ物までの距離がつかめず手が届かない

状態と対策

次に、よくみられる状態と、その対策について簡単にご紹介します。
 食べることに集中していない 
●他の人たちが気になっているのかもしれません。
 景色が見える方向や壁側など、落ちついて食べられそうな環境にしてみましょう。
●食べる集中力を切らさないように、無用に声かけをしないようにしましょう。

 どんどん口に詰め込む  
●一口量を少なくするために、小さいスプーンや小さい器を使いましょう。
●周りの声かけで、口の中に入れてもらうようにしましょう。

 食べものであることに気がつかない  
●食べ物という認識が薄く、食べ物を拒否してしまうことがあります。
 お箸やスプーンなどを持たせて、食べるものであることを認識してもらいましょう。
●昔使っていた料理の名前(「おしるもの」など)を使ってみましょう。
 過去の言葉に反応をすることがあります。

 食べ物以外のものをつまむ  
●器の模様が食べ物に見えて、本当の食べ物には目がいかないことがあります。
 器はシンプルな方がおすすめです。
●視野が狭くなっているため、色の識別が難しくなっています。
●お皿と食べ物の色がはっきり異なるものの方がわかりやすいです。
※間違って口にしやすいもの:花、トイレットペーパー、おしぼり、紙、洗剤、石鹸、薬の包装シート

 窒息の危険がある  
食べるペースや量の判断ができにくく、おいしそうだとたくさん口の中にかきこんでしまったり、飲み込んだかどうかの認識があいまいになったりすることがあるため、周りが声をかけるようにしましょう。

 口を開けない  
●食べ物を口元に持っていっても口を開けないときは、空腹感がないのかもしれません。
 空腹を感じると口を開けるかもしれないので、無理をさせないようにしましょう。  
●好きな食べ物を口元に近づけてみましょう

 口に食べ物が入っても噛まない  
●口を少し刺激して、口の動きを促しましょう。
●スプーンやフォークを自分の手で持って食べてもらいましょう。

 一つの料理だけを食べ、他のものに手をつけない  
認知症などにより視野が狭くなり、他の料理に気づいていない、色別ができていないことなどが考えられます。見えるところに器を移動する、「ここに料理がありますよ」と声かけをする、食材が目立つ色の器にするなど工夫してみましょう。

 手づかみで食べる  
食具が使いづらい、姿勢が保てない、環境が合わないなどが考えられます。介助により食べた場合は、面倒くさいという気持ちがあるかもしれません。手づかみは悪いことではないので、手でつかみやすいように一口大に切ってしまうなど、その方に適した対応を検討してみましょう。
「口から食べる」ことは、生きている限りできるだけ長く続けたいものです。食べることは本来楽しく、生きがいをもたらします。介助する側は大変ですが、スプーンや箸などの自助具、姿勢、食べ物の形状などに配慮し、少しでも「自分で食べ続けられる」ことを周りが大切にしてあげましょう。それがサポートの第一歩です。

便利な食事用品はこちらもチェック

使っていいね!すべりにくいグリップ
756円(税込)
差し込むだけ!握力の弱い方でも滑りにくく、しっかり握れる。

多機能スプーン箸ケンジー 玉付 赤
2,376円(税込)
手が思うように動かなくてお箸を使えない方に


箸ノ助
2,700円(税込)
紫檀の木を一本一本削り出して作った介護用品お箸

ディスポ エプロン袖なし ピンク(100枚入)
2,592円(税込)
介護の現場などで活躍!使い捨てで、洗濯いらず!