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専属薬剤師監修のオリジナル記事「知っておきたいセルフメディケーションコラム」健康管理には、日頃から適度な運動と栄養バランスのよい食事に気をつけ、しっかりと睡眠時間をとり、自然治癒力を高めることが大切です。 かぜや軽いケガなどの軽度な体調不良は、OTC医薬品(一般用医薬品)を利用して、自分で手当てすること(セルフメディケーション)も健康管理に役立ちます。体との関係を知って上手に取り入れましょう。

2018.6.15

第45回 PMS(月経前症候群)

PMSとは

PMS(Premenstrual Syndrome)は、月経開始の3~10日位前から現れる身体的、精神的な不調で、月経が始まると症状が弱まり、やがて消えていきます。海外ではずいぶん昔からPMSの研究が進められ認知度も高いのですが、日本でPMSという言葉が知られるようになったのは、ここ数年のことであり、まだ社会的認知度は低いようです。そのため何らかの症状を抱えていながら、PMSの症状と気付かず悩んでいる女性もたくさんいます。
PMSとは

PMSの症状

PMSの症状は200以上もあると言われていますが、中でも多いのは、「イライラする」「怒りっぽくなる」「理由もなく悲しくなる」といった精神的なものや、「胸が張る」「下腹部の痛み」「ニキビ、肌荒れ」というような身体的な不調などです。症状の度合いにも個人差があり、症状が現れてもそれほど気にならない人から、日常生活も困難になってしまう人までさまざまです。

また、年齢や出産経験の有無によっても症状が異なるといわれており、20代の女性は胸の張りなど身体的症状が強く現れる傾向にあり、30代になると20代の症状に加えて精神的な症状が顕著にあらわれてくるようです。一般的に出産経験のある女性の方がイライラや不安感などの精神的症状を感じる人が多く、出産経験のない女性に下腹部痛や胸の張りなどの身体的症状が多く見られるといわれています。月経が来れば症状がなくなることが多いため、我慢してやり過ごしている人もいますが、精神的な不調は、時には周囲の人を困惑させてしまうこともあります。
 PMSの代表的な症状 
精神的症状
●イライラする
●怒りっぽくなる
●不安が高まる
●興奮する
●理由もなく悲しくなる

●無気力になる
●眠れない
●集中できない
●ボーっとする
●落ち着かない
身体的症状
●胸が張る
●むくみ
●体重増加
●下腹部の痛み
●頭痛、腰痛

●ニキビ、肌荒れ
●疲れ、だるい
●のぼせ
●異常な眠気
●便秘、下痢

イライラ

PMSが起こるメカニズムと時期

PMSがどうして起こるのか、その原因はまだはっきりとは分かっていませんが、排卵後の黄体期における女性ホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)の急激な変動が関わっているといわれています。ホルモンは身体にさまざまな影響を及ぼすものですが、例えば、黄体期にエストロゲン(卵胞ホルモン)の分泌が減ることにより、「セロトニン」という喜びを感じる「脳内物質」の量が急激に減り、うつ症状やネガティブな気持ちを引き起こします。

また、プロゲステロン(黄体ホルモン)は、妊娠の継続に必要なホルモンであると共に、体内に水分を溜める働きや、食欲を増進させる働きがあるため、プロゲステロンの分泌が増えることによりむくみが生じ、身体全体が重くだるく感じると共に、水分が乳房にたまれば乳房の張りが、頭にたまれば頭痛が生じます。
PMSが起こるメカニズムと時期
【出典元】ゼリア新薬 「プレフェミン」サイト

食欲増進と体重増加

プロゲステロン(黄体ホルモン)には、血糖値を上昇させる作用があります。PMS発症時期にプロゲステロンの影響で血糖値が上昇すると、こんどは血糖値を下げようとして「インスリン」というホルモンがたくさん分泌されます。インスリンは糖を脂肪に変える働きを持ちますので、使われなかった糖をせっせと脂肪に変えて蓄えてしまうのです。

加えて、インスリンが血糖値を下げるために空腹感が増し、食欲が増進してカロリーオーバーになってしまうことがあります。 プロゲステロンの分泌量増加のせいで起こっていたむくみや体重増加も、月経後になるとプロゲステロンの減少とともにおさまり、体重も元に戻るのが通常です。
ビタミンD

PMSの治療薬「チェストベリー」

チェストベリーは地中海沿岸や西アジアなどに自生するチェストツリーの果実で、海外においては古くから婦人科系疾患の治療に用いられてきた西洋ハーブです。日本では医療用医薬品として用いられた経験はありませんが、「プレフェミン」という製品が初めてPMSの効能を取得し、「要指導医薬品」として販売されています。18歳以上の女性が使用でき、1日1回、1回1錠を服用します。

プレフェミンの作用機序は詳しくは分かっていませんが、体内のドパミン受容体を刺激することによりエストロゲンとプロゲステロンの分泌バランスを整えることでPMSの症状を和らげるとされています。月経開始直後から飲み始めると1ヵ月ほどで症状の改善を実感できる可能性が高く、国内における臨床試験では、月経3周期分服用した女性の約90%が症状が緩和したと評価しています。
プレフェミン 30錠
要指導医薬品
1,944円(税込)
西洋ハーブ チェストベリーが効く


プレフェミン使用時の注意

18歳未満の女性は、月経周期が安定していないため使用できません。原材料名にチェストベリー、チェストツリー、アグニの記載がある食品等とは併用しないでください。利尿剤、経口避妊薬、抗うつ剤、精神神経系に作用する薬、月経に関連する漢方薬を服用中の人、うつ病の診断を受けている人は使用前に医療機関を受診してください。

1ヵ月程度服用しても症状が改善しない場合、また症状が改善しても3ヵ月を超えて服用する場合には医療機関を受診してください。

PMSの治療薬「漢方薬」

東洋医学では「気」、「血」、「水」という3つの要素を身体の基本と考えます。そして、それらの巡りのバランスが崩れることで病気が起こるとしています。西洋医学的に見ると、「気」はエネルギー、「血」は血液、「水」はリンパ液やその他の体液が当てはまり、それぞれの巡りを漢方薬によって整えて、体全体の不調をなくしていく方法と言えます。

PMSの場合は、月経前の子宮内膜の様子や骨盤内の血液循環が変化するために血液の流れが滞ることや、ホルモン量の変化により水むくみが起こること、更に精神バランスを保つことが難しくなるということで、気、血、水のすべてに異常が見られ、さまざまな症状を日引き起こすと考えます。

当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)

当帰芍薬散は痩せ型で体力のない虚弱体質の人に向いている漢方薬です。

当帰(トウキ)、川キュウ(センキュウ)、芍薬(シャクヤク)、蒼朮(ソウジュツ)、沢瀉(タクシャ)、茯苓(ブクリョウ)の6つの生薬から成り、全身に大切な栄養を与え、血行を良くするのと同時に、水分代謝を整えることで余分な水分を体からとり除いてくれます。そして、痛みを和らげたり、ホルモンバランスを整える効果もあります。
ツムラ漢方当帰芍薬散料エキス顆粒 20包
第2類医薬品
2,592円(税込)
冷え症でむくみやすい方に



加味逍遙散(カミショウヨウサン)

加味逍遙散の主な配剤生薬は柴胡(サイコ)や芍薬(シャクヤク)および山梔子(サンシシ)や牡丹皮(ボタンピ)です。

体力がなく疲れやすい人、肩が凝りやすい人、神経質で精神不安やイライラ感のある人、頭痛・めまい・のぼせが起きやすい人に向いており、下腹部痛や精神症状などPMSの多様な症状を緩和します。 精神症状においては、神経の高ぶりにも、抑うつ気分にも効果があります。
ツムラ漢方加味逍遙散エキス顆粒 20包
第2類医薬品
2,592円(税込)
イライラしがちな方に



桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)

桂枝茯苓丸は「お血」(おけつ)を改善する産婦人科に特化した漢方薬です。お血とは血がなんらかの異常で滞っている状態、またはそれによって起きる様々な症状のことで、下腹部痛や便秘、冷え、ほてり、ふきでものなどの症状であらわれる事もあります。

桂皮(ケイヒ)、芍薬(シャクヤク)、茯苓(ブクリョウ)、桃仁(トウニン)、牡丹皮(ボタンピ)から成り、典型的には、体力が中以上で、赤ら顔、のぼせやすいのに足が冷え、下腹部が張る感じがする人に向く薬です。頭痛、肩こり、めまいなどにもよく聞く薬です。
ツムラ漢方桂枝茯苓丸料エキス顆粒A 20包
第2類医薬品
2,592円(税込)
のぼせて足は冷える方に

ペア漢方エキス錠 112錠
第2類医薬品
2,354円(税込)
生理前などに繰り返すニキビ・シミに効く



五苓散(ゴレイサン)

五苓散は、比較的どんな体質の人にも合う漢方薬です。沢瀉(タクシャ)、 猪苓(チョレイ)、 茯苓(ブクリョウ)、白朮(ビャクジュツ)、 桂皮(ケイヒ)から成り、体力に関わらず使用でき、のどが渇いて尿量が少なく、めまい、はきけ、嘔吐、腹痛、頭痛、むくみなどのいずれかを伴う人に向いています。主に水分の循環を改善し、余分な水分を体の外へ出す処方で、部分的に溜まった水分だけを出すので、一時的に不要な水分が体にたまっているときに効果的です。

むくみが酷かったり原因不明の頭痛、めまい、耳鳴りに悩む人は水分の流れが滞っている可能性がありますので、試してみるのもよいでしょう。
ツムラ漢方五苓散料エキス顆粒 10包
第2類医薬品
1,944円(税込)
はきけや腹痛を伴う下痢の方に



PMSは月経開始前に始まり、月経開始とともになくなる症状です。月経周期に関係なく症状がある場合は、他の疾患の可能性がありますので、必ず医療機関を受診してください

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